『孤独のチカラ』

齋藤孝『孤独のチカラ』PARCO出版

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 ひとりでいるのも大事なんだよ、ひとりでやらないと身に付かない能力もあるんだよ、という本。
 具体的な内容には七割がた賛成できるものの、この本には見逃せない落とし穴がある。それは、齋藤孝が苦しんでいたというその「暗黒の十年」、すでに既婚者として生活していたということである。
 本文中、そのことにはほんの少ししか触れていない。だから、ひょっとするとそれはそれは冷え切った、少しも心の通じ合わない夫婦だったという可能性もなくはない。それならまさに暗黒であろうが…。

 体の芯から孤独を感じている人間に対して、この本が余計に鞭打つことにならないのか、要らぬ心配をしてしまった。