ぼけぼけ&『半島を出よ』

 ぼけぇっとしている日々です。

 村上龍『半島を出よ』がようやく世田谷区立図書館に来たので、読みました。久々に本をバーッと読み通しました。
 面白かった、です。
 村上龍自身があとがきで書いているとおり、北朝鮮の人間をも語り手として用いるという思い切ったことをしています。他の村上龍の作品はよく知りませんが、少なくともこの作品に関する限り、頻繁に語り手(というか視点としての人間)が入れ替わることからくる目まぐるしさがあります。それが良くも悪くもこの小説全体の雰囲気を作り上げていますが、ちょっとやりすぎかなとは思います。
 徹底した取材に基づく(であろう)リアルで緻密な描写が全編で貫かれているため、ストーリーが気になって早く先に進みたいという読者にはややうるさく感じられるかもしれません。が、まさにそういった細かい描写にこそ村上龍がこの作品に込めた思いを読み取るべきなのだと思いますし、語り手を多数用いた手法を可能にするためにも、必要なことであったでしょう。

 この小説がいわゆる「文学的」かどうかはわかりませんが、しばらくぶりに夢中になって読めた本であることは間違いありません。村上龍も(『ねじまき鳥クロニクル』以後の)村上春樹も、「変化」を志向する小説家だと思いますが、その表れ方はこんなにも違うのだなあと、ふと思いました。