9.16

 生活が狂いすぎて、いろいろとわけがわからなくなってきた。
 閉店ギリギリのTSUTAYAに駆け込み、たまたま目に入った 奥山貴宏『31歳ガン漂流』ポプラ社 を手に取り、これも運命だと思い続編の 『32歳ガン漂流エヴォリューション』『33歳ガン漂流ラスト・イグジット』牧野出版 もまとめて買う。
 帯の「本物にはリアルじゃない部分が必ずあって」という宮藤官九郎の言葉は、実に正しい。こういっちゃ失礼だが、闘病以外で書かれている内容がそれほど面白いというわけでもないし、文章が格別うまいわけでもない。何か飛び抜けた人間であると感じさせるわけでもない。だがだからこそ、この本には価値がある。

 31歳にして、ガンで余命二年という告知を受けた人間による日記。自分は生きているんだか死んでいるんだかわからないと思っていたが、これを読んで「ああ、おれは生きていたんだな」と思い直すことになった。とりあえず、生きている。ちょっと親知らずが痛いだけだ。

 別に生きる気力が湧く、とかそういう即効性はなかったが(そもそもそれを求めるのは何か卑しい気がしてイヤだ)、死んだらコーヒーも飲めず文句も言えずジャンプも読めないんだなと思うと、死にたかねえなと思った。

 三冊で4000円以上したが(嫁さんごめん)、それだけの価値はあった。この本と一冊の小説を書くことで燃焼し尽くして亡くなったのだから、当然かもしれない。