『すばらしき愚民社会』

小谷野敦『すばらしき愚民社会』、新潮社、2004年

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 うへえ…ちょっと面白いよこの本。序章からして「今や『大衆』は司馬遼太郎さえ読まない」「『ハリポタ』をリクエストする東大生」だし。確かに駒場図書館にハリポタあってビックリした記憶が。しかも思わず借りて読んじゃったし。ごめんね小谷野先生。あ、彼は東大の非常勤講師として英語を教えています。

 評論家やるにはこんなに勉強しないといけないのか、と思わされるのが小谷野の本です。彼は他人を非難しながら同じ失敗を自分でしてしまうという程度にはアホですが、やはり頭がいいんですね。読書量も半端なく、歴史も知っているし、論理的欠陥にもすぐ気付く。

 しかし彼のスタイルの面白さが、大学教授のポストを得た後も続くかというと、無理じゃないかと思います。『もてない男』(ちくま新書)かなんかで「おれは東大だって出ているのに、なんでもてないんだ」と言っていますが、同じように「おれはこんなに頭が良いのに、どうして大学教授のポストが回ってこないんだ」というメッセージを感じます。その「チクショー」感があの独特のバランスを支えているのだと思います。エラくなっちゃったらただの嫌味ですから。

 小谷野にはこれからもがんばって面白い本を書いてもらいたいものです。